【本人訴訟体験談】損害賠償の予定をすれば本当に立証しなくても良いの?違約金が一部無効にされた話

本人訴訟やってみた

契約において、損害賠償の予定を予め定めることがあります。

(賠償額の予定)
第420条
1.当事者は、債務の不履行について損害賠償の額を予定することができる。
2.賠償額の予定は、履行の請求又は解除権の行使を妨げない。
3.違約金は、賠償額の予定と推定する。

民法第420条に基づき、「契約書において予め損害賠償の予定をしておけば、債務不履行があったことだけを証明するだけで損害賠償の請求ができる」ということです。

こちらの記事で取り上げた(平31(ワ)3350号 損害賠償等請求事件)判例において、裁判所は明確に「損害賠償の予定条項は損害の立証を軽減する目的で設けられたものであって、原告が本件違約金規定に基づき違約金を請求するに当たり、損害の発生やその金額について立証をすることを要するものではない。」と判断しています。

一方、僕実際の経験からすると

厳密的に立証しなくても、丁寧に説明をした方がよい

ということになります。

例えば、前述の判例((平31(ワ)3350号 損害賠償等請求事件))においての原告の再反論「L社(原告)の再反論:公序良俗に反するものではない」のようにです。

判例の解説を確認した方は、

をご参考いただくとして、この記事では、僕の実際の本人訴訟における経験談を共有します。

僕は法律の専門家でも有資格者でもなく、あくまでも勉強ノートとしてまとめており、数多くの本人訴訟で体験した経験談をシェアしているだけであることを予めご了承ください。

損害賠償の予定を3万円にしている

うちのサイトは、違反により登録抹消に至った場合は、損害賠償の予定を3万円にしています。

この金額の設定自体は、登録抹消の場合に発生する作業の実費を元に弁護士と事前に相談した上で設定しています。

多少簡単に説明すると、

うちは、インフルエンサーマッチングサイトを運営しており、広告主の報酬未払いやインフルエンサーの商品持ち逃げなどがあります。

経験上、トラブルを起こす会員は多くの場合、他にも違反をしていることが多いため、トラブル発覚時にはその会員の全メッセージ履歴の確認が必要となります。というのも、一部の被害者が運営に通報せずに泣き寝入りしてしまうこともあり、被害者のサポートのためにも他の被害者がいないか確認する必要があるからです。

この「メッセージ履歴の精査作業」は、手間と時間がかかり、それなりのコストが発生します。さらに、精査作業の後に登録抹消作業に移る際も、単に会員情報を削除するだけでは不十分です。精査に漏れがあり再精査が必要となるケースもあり、また、過去のメッセージ履歴は、被害者が法的措置を取る際の証拠として必要となる可能性があるため、適切な保管や管理が求められます。

そのため、登録抹消の作業は単にデータを削除するのではなく、実際にデータをアーカイブとして別のデータベースへ移管させる必要があります。

これらの作業内容から考えると、損害賠償の予定として登録抹消の際に3万円を請求するのは決して暴利ではないことがわかるでしょう。

基本的に損害の立証はしていないものの結果的に説明はしている

前述の通り、民法第420条の主旨としては、「契約書において予め損害賠償の予定をしておけば、債務不履行があったことだけを証明するだけで損害賠償の請求ができる」ということなので、僕も提訴する時には、違反行為であることの主張・立証に努めており、損害の発生や損害額の立証を特に行っていません。

とはいえ、被告(相手)は、必ず答弁書や準備書面において「損失はない」とか「損失額はゼロ」ともがきながら抗弁してきます。

すると、こちらもそれに反論する形で、先ほど触れたように、登録抹消の際の作業を説明することになる結果、結局、どのような損害があり、その損害が如何ほどのものかを説明することになります。

3万円の一部が無効にされ1万円に減額されたケース

ところが、とある事件において、この3万円の一部が無効にされ、1万円に減額されました。

この事件がやや特殊なのは、相手(被告)は答弁書も出さずに欠席したことです(これ自体は珍しくないが)。

そうなると、「損失はない」とか「損失額はゼロ」といった抗弁も出されていないので、こちらとしても、それに反論することもなく、当然にどのような損害があり、その損害が如何ほどのものかを説明するくだりもでてきません。

結果的に、以下のように、違反行為があったことは認められたものの、1万円を超える部分は無効にされました。

判決の抜粋
(前略)
約定違反の程度とその影響は大きくはなく、利用規約に定められた損害賠償金3万円の規定の効力をそのまま認めることは被告にとって厳しすぎるというべきである。従って信義誠実の原則により、本件損害賠償金については1万円を超える部分については原告の権利行使を制限すべきであって無効と解されることから、損害賠償金を減額し1万円の限度で認めるのが相当である。

損害の発生くらいは説明した方が良い

実際に行われる作業の内容から考えても、損害賠償の3万円は暴利ではないし、他の複数の事件においても「3万円は相当である」という判断が下されました。

このことから、恐らく「登録抹消の作業にかかる時間と労力」が伝わっていないため、本事件においては1万円に減額されたと思います。

よく考えてみれば、「登録抹消は消すだけでしょう」と思うのが通常の考え方であり、ワンクリックとか、右クリックとか、ファイルをゴミ箱に移動するだけとか、そのようなイメージが持たされているかもしれません。

そう考えると、とりわけ、懲罰損害賠償を認めていない日本の司法制度において、「そうではなく、一般的なイメージとは異なり、こういう風に損害が出ている。だから別に暴利ではなく、正当な請求である」との説明はあった方が良いでしょう。

僕は法律の専門家でも有資格者でもなく、あくまでも勉強ノートとしてまとめており、数多くの本人訴訟で体験した経験談をシェアしているだけであることを予めご了承ください。

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