SNSはネットワークの外部性が強く効いているため、それを商売にするならば、先行者優位の獲得が成功のカギを握っている。と、多少に経営学をかじった人であれば、誰もが同意するでしょうが、しかし、MIXIの例では、どうやらもう少し複雑な事情がありそうです。
ということで、この記事では、MIXIの例を切口に、SNSの盛衰からビジネスチャンスの発見に考えを巡らせます。
なお、予め断っておきますが、この記事を執筆するにあたり、僕は厳密な市場調査も分析も行っておらず、気の向くままに筆を任せるだけです。
MIXIは何故廃れたか?
一時的に飛ぶ鳥を落とす勢いのMIXIでしたが、今はもうすっかりと「寂れたSNS」の代名詞になってしました。
そもそも、MIXIは何故廃れたのか?
まず、いろんな説をまとめて行きます。
実際に衰退していない説
確かにMIXIは一回死にそうになったものの、その後はモンスターストライクで挽回したではないか?しかも、モンスターストライクは今も人気なので、実際にMIXIは衰退していない!
という説です。
ただ、会社としてのMIXIはモンスターストライクに救われたとしても、SNSとしてのMIXIが廃れたのは事実なのでしょう。
足跡機能を改悪した説
MIXIには、誰が訪ねて来たのかを確認できる足跡機能がありました。
それを廃止したのが原因でユーザが離脱し始め、その後、MIXIは足跡機能を復活させたものの、もう後の祭りだという説です。
これが原因だと説いている記事が最も多いようですが、しかし、もしも、「SNSのユーザは足跡機能だけを求めており、足跡機能が廃止されたという理由だけでSNSから離脱する」のであれば、「足跡機能を設けていないSNSがユーザを獲得することはなく、MIXIを勝ち抜くこともない」ことになるはずです。
しかし、足跡機能を実装しているSNSはほぼないことを考えると、明らかにMIXIが衰退した原因は足跡機能の改悪ではないことは明らかでありましょう。
招待制を廃止した説
MIXIは元々招待制を採用しており、選ばれし者しか入れない世界だったのに、招待制を廃止したため、一般人が大量に入り込んだ結果、MIXIを破滅の道に導いたという説です。
この説は半分正しいけど、半分正しくないです。
一般人が大量に入り込んだのは確かに事実ですが、既存の会員を離脱させるほど顧客価値を毀損したという証拠は何もないため、それがMIXIを衰退に導いた犯人に仕立てるのは無理があります。もっとも、審査を伴わない単なる登録招待制であれば、招待制は廃止されるか形骸化されるかのいずれかになる運命です。
直近のクラブハウスの例でも、それは明らかでありましょう。
SNSを汚染する大人と新天地を求める若者
しかし、招待制だから云々ではなく、SNSの成長に伴い、利用者が大量に増えたことは、どうもSNSの盛衰には関係がありそうです。
というのは、こんな説もあります。
若者たちは、単純にコミュニケーションとそれに付随する機能を楽しむために新しいSNSを利用し始めます。しかし、次第に、お金を稼ごうとする大人たちが入っていき、SNSを大人の事情で汚染していきます。すると若者たちはまた新天地を求め新しいSNSへスイッチしていきます。
これは非常に面白い視点であると共に、現に様々なSNSの盛衰を説明できるように事実でもあるように思えます。
それとは別に、大人の事情に汚染されているかどうかではなく、単に大人が入り込んだという理由でもSNSの盛衰を説明できます。
たとえば、元々は同級生同士で遊んでいたものの、親の世代が入り込んだことにより、投稿もしづらくなった結果、利用頻度を下げたり、ほかのSNSへ逃げ込んだりするとも考えられます。
SNSは元々大人の事情に汚染される運命であった
しかし、SNSを運営している会社が営利組織である限り、SNSが大人の事情に汚染されるのは、必然性があるようにも思えます。
現在では、メジャーなSNSからマイナーなSNSまで、マネタイズは広告モデルがメインストリーム(というより、しかない)なので、利用者数=収益のポテンシャルが成り立つわけだからです。
FaceBookやインスタなんかは販売機能、ショップ機能を実装していますけど、「若者」が販売するとも考えられるため、必ずしも「大人」が悪だとは限りませんが、言ってみれば、SNSで稼ぎたい人がSNSを汚染してしまい、単純にSNSで楽しみたい人を追い出してしまう、という構図が正しいのかもしれません。
実際に、「そもそも、稼げないSNSなんかは使わない」と公言しているインフルエンサーもいるし、クラブハウスは(利用者が)マネタイズできないから利用者数は頭打ちになると予測していたインフルエンサーもいました。
今になって思えれば、なるほどと一理はあるように思えます。
大人たちの理屈
そもそも、商売をやっている人は、人が多い所に行く、それは商売における自然の摂理でありましょう。
利用者がいないSNSで商売をするのは、いわば、人のいない場所で露店を出すのと同じぐらい不合理的な行為でしょう。
それは、広告モデルでマネタイズしているならば、なおさらこの傾向を加速させることになります。
購買力の低い層しかいないSNSに、広告なんか投入しない、という理屈であります。
SNSの宿命
結局のところ、SNSが盛んになればなるほど、そういう宿命から逃れなくなります。
とりわけマネタイズに広告モデルを採用している限りです。
ただ、現実的に広告モデルから脱却するのはやや不可能なので、この輪廻は確定でしょう。
3 SNSの事業機会を考えてみる
裏を返せば、広告モデルから脱却することができれば、この輪廻から脱出すると同時に競争優位性をも入手することができるかもしれません。これは一つのアプローチになりうるものの、ややハードルは高いでしょう。
一方、これまで各SNSの状況からもわかる通り、SNSビジネスは、ネットワーク外部性が強いとはいえ、若者(楽しみたい人)を切口に市場を攻めるのは十分あり得るということです。
もちろん、拡大しようとすれば、同じ運命にはあるものの、常に若者向け(楽しみたい人)のSNSやコミュニティを出し続けるのもありかもしれません。新しいSNSを出し続けられなくても、SNS内のコミュニティーで区切ってしまえるような施策が、もしかしたら有効だったりします。
MIXIの例を切口に、SNSの盛衰からビジネスチャンスの発見に考えを巡らせてみましたが、そんなところです。

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